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Diels-Alder反応を触媒する酵素の機能解明およびその改変に成功


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本学薬学部の渡辺賢二教授、橋本博教授およびカリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA) のYi Tang(イー?タン)教授、Kendall N.Houk(ケンダール?ハウク)教授らの国際共同研究グループは、Diels-Alder反応を触媒する酵素の精密機能解析を行い、その酵素の構造を基盤とした改変により、立体選択性の異なる化合物を生成する酵素を作出することに成功しました。

Diels-Alder反応は、位置および立体選択的に炭素―炭素結合を形成することができるため、有機合成化学分野において広く用いられてきた反応です。一方で微生物や植物が産生する化合物の中には、Diels-Alder反応によって構築されると考えられる化合物が数多く見られることから、天然にもDiels-Alder反応を触媒する酵素、すなわちDiels-Alderase (DAase) が存在すると示唆されてきました。世界中でそのDAaseの探索が行われ、現在までに様々なDAaseが発見されてきました。しかしながら、DAaseに関する詳細な分子機構、すなわち反応の駆動力や位置および立体選択性の発現要因について詳細に解明された報告はありませんでした。今回研究グループは、この酵素的Diels-Alder反応の触媒メカニズムを、酵素―化合物の共結晶構造をもとに明らかにすることに成功しました。さらに酵素の基質結合部位に変異を導入することで、非天然型の立体化学を有する生成物を与える改変型酵素の作出も達成しました。また、Diels-Alder反応の特性上問題となり得る生成物による酵素反応阻害をDAaseがどのように回避しているかについて、酵素中における基質の化学構造と計算化学による遷移状態の自由エネルギーの解析により、合理的な説明を与えることができました。これらの結果は、DAaseの構造基盤に革新的な知見を与えただけではなく、より高性能高効率な触媒活性を有するDAaseの創出、すなわちDAaseのエンジニアリングに関する今後の重要な指針となりました。
本成果は、本学薬学部とUCLAとの共同研究成果です。触媒化学分野において権威のある国際化学雑誌『Nature Catalysis』(Impact Factor: 30.471) 電子版に2021年3月1日付けで掲載されました。

図 CghAによる変換反応

<掲載された論文>
Catalytic mechanism and endo-to-exo selectivity reversion of an octalin-forming natural Diels–Alderase
Sato M., Kishimoto S., Yokoyama M., Jamieson C.S., Narita K., Maeda N., Hara K., Hashimoto H, Tsunematsu Y., Houk K.N., Tang Y., Watanabe K.
関連リンク:Nature Publishing Group
https://www.nature.com/articles/s41929-021-00577-2(外部サイトへリンク)


(2021年3月2日)

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