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昆虫の発育を制御する新たなメカニズムを発見


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ヒトを含む様々な動物は、未成熟な「子ども」の時期に身体を大きくさせたのち、生殖機能を有する「大人」へと成熟します。ヒトと姿かたちは異なりますが、昆虫もまた同様に、幼虫の間に栄養を摂取して成長したのち、蛹を経て成虫へと羽化します(図1)。食品栄養科学部 大原裕也助教らの研究グループは、「生き物はどのようにして大人へと発育するのか?」という問いに答えるべく、キイロショウジョウバエを用いた研究を行い、個体成長や成熟を司るホルモンを作り出すために重要なメカニズムを発見しました。

成果1. 昆虫の発育に欠かせないエクジステロイドの産生制御因子を同定

多くの動物種において子どもから大人への個体成熟はステロイドホルモンによって制御されており、昆虫ではエクジステロイドのはたらきによって幼虫から蛹への変態が引き起こされます(図1)。静岡県立大学 食品栄養科学部の大原裕也助教と小林公子教授、筑波大学 生存ダイナミクス研究センター 丹羽研究室の上山拓己助教らの研究グループは、エクジステロイドの産生を制御するメカニズムを明らかにするために、ショウジョウバエを用いた遺伝学的解析を行い、エクジステロイド合成の制御因子としてSu(var)2-10およびSu(var)205(補足1)を同定しました。これらの因子を阻害すると、6つのエクジステロイド合成酵素遺伝子のうち「ネバーランド遺伝子(補足2)」の発現が低下し、その個体は幼虫から蛹への移行に異常をきたすことが分かりました(図2)。本研究の成果は、昆虫が変態を開始するために必要とする遺伝子発現制御システムを理解するための基盤となります。
この成果は、米国遺伝学会が発行する国際学術雑誌「Genetics」に2022年9月23日付でオンライン掲載されました(論文1)。また、本研究の成果物である共焦点顕微鏡の写真(写真1)はGenetics誌2022年11月号の表紙に選出されました。

成果2. 幼虫の成長に必須なインスリン様(よう)ペプチドの産生を制御する化学感覚神経を同定

幼若期の個体成長は、生物種を超えてインスリンおよびインスリン様成長因子によって制御されており、昆虫もまたインスリン様ペプチドのはたらきによって幼虫期の急激な成長を実現しています(図1)。これまでに、インスリン様ペプチドの産生を制御する様々なホルモンが同定されてきましたが、末梢神経系によるインスリン様ペプチドの産生制御機構は殆ど明らかとなっていませんでした。大原裕也助教と米国カリフォルニア大学リバーサイド校の山中直岐准教授の研究グループは、ショウジョウバエを用いてインスリン様ペプチドの産生や成長に関与する化学感覚受容神経を探索し、Gr28a(補足3)と呼ばれる化学感覚受容体を発現する「Gr28a神経」がインスリン産生細胞に直接接続し、インスリン様ペプチドの産生と個体成長に重要な役割を果たしていることを見出しました(図3)。この神経は、成長を進めるために重要な化学感覚のセンサーとして働いていると考えられます。
この成果は、英国の出版社The Company of Biologistsが発行する国際学術雑誌「Development」に2022年10月13日付でオンライン掲載されました(論文2)。この論文の概要はDevelopment誌最新号のResearch Highlightに選出されました。

おわりに

昆虫ホルモンを制御する分子機構を明らかにしていくことは、生き物が大人になるために必要とする分子メカニズムを理解していくうえで重要な基盤となります。また、これらの基礎生物学的研究は、食用?飼料用昆虫の生産技術開発といった、昆虫が有する優れた生育能力を活かした応用研究の礎にもなります。



論文1

Yuya Ohhara*, Yuki Kato, Takumi Kamiyama, Kimiko Yamakawa-Kobayashi
Su(var)2-10- and Su(var)205-dependent upregulation of the heterochromatic gene neverland is required for developmental transition in Drosophila
Genetics, iyac137 (2022). https://doi.org/10.1093/genetics/iyac137(外部サイトへリンク)

論文2

Yuya Ohhara*, Naoki Yamanaka*
Internal sensory neurons regulate stage-specific growth in Drosophila
Development, dev.200440 (2022). https://doi.org/10.1242/dev.200440(外部サイトへリンク)
Research Highlight:https://journals.biologists.com/dev/article/149/21/e149_e2102/278607/Sensing-when-to-grow(外部サイトへリンク)

* 責任著者

補足1

Su(var)2-10、Su(var)205:Su(var)2-10はタンパク質修飾因子として機能する核内タンパク質であり、Su(var)205(またはHeterochromatin protein 1a)はヘテロクロマチンの主要な構成因子である。

補足2

ネバーランド(neverland)遺伝子:エクジステロイド生合成経路の初発段階であるコレステロールから7-デヒドロコレステロールへの変換を触媒する酵素をコードしており、この遺伝子の機能が欠損した個体ではエクジステロイドが合成できないため、小さな幼虫の状態で発育を停止する。

補足3

Gr28a:昆虫はGustatory receptor(Gr)と呼ばれる化学感覚受容体を有しており、糖をはじめとした化学感覚を感知する。ショウジョウバエは68種のGrを有しており、Gr28aはリボヌクレオシドに応答することが報告されている。

図1

昆虫の発育を制御するホルモン


図2

Su(var)2-10およびSu(var)205によるネバーランド遺伝子の発現制御

図3

Gr28a神経によるインスリン産生細胞の制御


写真1

Genetics誌2022年11月号の表紙に選出された写真

■Genetics | Oxford Academic
https://academic.oup.com/genetics(外部サイトへリンク)
(2022年11月4日)

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