学部?短期大学部?大学院 合同入学式
4月9日、静岡市駿河区のグランシップで、学部?短期大学部?大学院の合同入学式を開催しました。学部生658人、短期大学生110人、大学院生130人、計898名が新たなスタートを切りました。新入生を代表し、薬学部の新谷柊斗さんが「様々なことに挑戦し視野を広げることで社会に貢献できるよう努めたい」と誓いの言葉を述べました。
入学式に続き、チアダンス部、アカペラサークル、ジャズダンス部のクラブ?サークル紹介を行いました。
入学式に続き、チアダンス部、アカペラサークル、ジャズダンス部のクラブ?サークル紹介を行いました。
式典の様子
歓迎のことば
誓いのことば
クラブ?サークル紹介
富易堂rich88手机版式辞
静岡県立大学富易堂rich88手机版 今井康之
本日、静岡県立大学に入学された 学部生658名、短期大学部生110名、大学院生130名の皆さん、入学まことにおめでとうございます。静岡県立大学の教員、職員、役員を代表して、皆さんを歓迎します。皆さんご自身の努力に敬意を表しますとともに、これまで皆さんを支えてこられたご家族はじめ関係者の皆様に、心からお慶び申し上げます。
また、鈴木静岡県知事、落合静岡県議会議長をはじめ、ご来賓の皆様には、ご多忙の折にもかかわらずご列席を賜り、厚く御礼申しあげます。
高校を卒業して大学に入ると、学習の仕方が大きく変わります。新入生の皆さんは、最初戸惑うことがあるかもしれません。その理由の一つは、「答え合わせのできない問題に挑戦する」からだと思います。高校までの学習では、はっきりとした正解があり、答え合わせができます。しかし、大学の学習では、答え合わせができないことが増えていきます。究極な状況はと言えば、まだだれも正解を知らない問題に挑戦することです。別の言葉で言うと、「研究」です。高校までの学習になじんでいる人のなかには、大学の講義内容が曖昧だと感じる人が多いかもしれません。それは、それだけ議論の余地がある内容を大学の講義では扱っていることを意味しています。
大学では、卒業するために卒業研究を行うことや、卒業論文の提出が求められます。
では、研究とは、何でしょうか?次の5点でまとめられます。
はじめからおわりまで、すべて自分が主人公です。ただし、指導教員や、その他の人々の意見にも耳を傾ける必要があります。
ところで、研究発表の形として、典型的なのが論文発表です。多くの場合、論文の原稿を出版社に提出すれば、掲載してもらえるという訳ではありません。必ずといっていいほど、原稿の内容について、その研究領域の専門家から批判されます。批判に対して、反論する力が必要です。もちろん、批判が当たっていると思った場合には、研究内容を修正/改善する必要があります。
とくに自然科学系の場合では、多くの場合、論文を英語で執筆します。したがって、英語を読む力、書く力は重要です。さらに、論文という形ではなく、学会で発表することもあります。特に国際学会では、英語で議論する力が重要です。聞く力と話す力が必要です。
ところで、研究力は、いわゆる学術研究や基礎研究だけではなく、広く地域の課題や、日常生活の問題を解決する力を養うことにも役立ちます。まず、問題点をはっきりさせて整理し、対応方針を立てるところから始まります。課題解決にむけて行動し、その行動がどの程度有効だったかどうかを振り返ります。
さて、昨年の入学式では、新入生の皆さんに新聞や本を読むことを勧めました。経済学者のトマ?ピケティーが書いた大変厚い本「資本とイデオロギー」を推薦しました。この本では、統計の取り方によって、重要なことが浮き彫りになることを鮮やかに示しています。例えば、国民所得の平均値では分かりませんが、所得の分布を示すことで、「所得格差」の拡大を見える化できます。つまり、「人々を所得の高い順にならべてみた場合,そのトップ10%に入る人々に、国民所得のどのくらいの割合が集中しているのか」を示した数値がその一例です。
著者の結論は、「経済学が独り歩きしすぎた結果、歴史学者、社会学者、政治学者、哲学者は経済問題の研究を、経済学者に丸投げしてしまうことがあまりにも増えた。市民が経済と歴史の知識を再び我が物にできるようにすることが大切だ」ということです。
今年度は、昨年ノーベル経済学賞を受賞した、ダロン?アセモグルの本をあげたいと思います。「技術革新と不平等の1000年史」という本です。原題は、「Power and Progress」です。
これは、人工知能をはじめとして、デジタル技術の進歩が、自動的に社会を良くするとは限らないと、警鐘を鳴らしている本です。2023年の12月に日本語訳が出ています。英文の原著も2023年の出版で、比較的新しい本です。過去の技術革新の歴史をみても、技術革新を主導して支配した人がもうかり、一般人は貧しいままであるという、歴史経済学からの教訓を述べています。
テクノロジーの進路を専門家に任せ、それ以外の人々に対してはテクノロジーを使えるように教育すればよいという立場には、明確に反対しています。デジタル?ツールについても、賢い人が設計し、そうでない人はツールを使えれば良いという考え方では、財産の集中をまねき、社会格差の固定につながるという展望です。この流れに対抗するには、ツールの利用者は、ツールの働き方について学び、ある程度ツールを支配できるようになることが有効だと述べています。
アセモグルの書いたもので、もう一つ推薦したい本に、「自由の命運」という本があります。副題として、「国家、社会そして狭い回廊」が付いています。原題は、「The narrow corridor」です。「狭い廊下」という意味です。これは、2020年に日本語訳が出版されています。現在、世界の政治状況が流動化し、紛争が多発している状況を踏まえて、読む価値のある本です。世界の政治体制と社会との関係について、古代から現代まで、様々な地域を網羅する形で書かれています。とくに、そこに生きる普通の人々の「命運」に焦点をあてて解説した本は、他にあまりないと思います。先ほど紹介した「技術革新と不平等の1000年史」とは、また違った印象があるでしょう。
さて、静岡県は温暖な気候、富士山や駿河湾など豊かな自然に恵まれ、多様な食文化もあります。本学の草薙キャンパスは、緑豊かな日本平の斜面の裾野に位置しており、隣には県立美術館があります。本学の学生には、無料で観覧できる常設展や、特別展の割引もあります。小鹿キャンパスは、ここグランシップからも近く、日本平の麓にあって、小鹿商店街にも近く、地域住民の方々がご家族連れで気楽に立ち寄れる場所です。
本学は、5つの学部と大学院、短期大学部を擁する総合大学で、外国人留学生も多数在籍しています。4つの学部が草薙キャンパスを、看護学部と短期大学部が小鹿キャンパスを本拠地としています。自分の専門の学習はもとより、他の専門を学んでいる学生、外国人留学生や地域の方々、教職員とも交流して、自ら様々な視点を獲得すること、地域課題の解決にも関心を持っていただけることを期待しています。
大学に入ると、やるべきことや、やりたいことがいっぱい出てくると思います。これから入学式の第2部として、クラブ?サークルの紹介もあります。新入生の皆さんが、こころと身体の健康に気を配りつつ、有意義な学生生活を送ることを期待して、私のお祝いの言葉とします。
本日は まことに入学おめでとうございます。
また、鈴木静岡県知事、落合静岡県議会議長をはじめ、ご来賓の皆様には、ご多忙の折にもかかわらずご列席を賜り、厚く御礼申しあげます。
高校を卒業して大学に入ると、学習の仕方が大きく変わります。新入生の皆さんは、最初戸惑うことがあるかもしれません。その理由の一つは、「答え合わせのできない問題に挑戦する」からだと思います。高校までの学習では、はっきりとした正解があり、答え合わせができます。しかし、大学の学習では、答え合わせができないことが増えていきます。究極な状況はと言えば、まだだれも正解を知らない問題に挑戦することです。別の言葉で言うと、「研究」です。高校までの学習になじんでいる人のなかには、大学の講義内容が曖昧だと感じる人が多いかもしれません。それは、それだけ議論の余地がある内容を大学の講義では扱っていることを意味しています。
大学では、卒業するために卒業研究を行うことや、卒業論文の提出が求められます。
では、研究とは、何でしょうか?次の5点でまとめられます。
- まず、何が問題なのか、具体的な問題としてどのように取り上げれば良いのかを、自分で考えて整理します。
- 次に、問題に対する答えを得る方法を自分で考えます。
- 調査や実験を自分で行います。
- 問題に対する答えを自分でまとめます。
- 1から4について自分で発表します。発表のなかでは、必ず研究成果の意義を主張することを忘れてはなりません。
はじめからおわりまで、すべて自分が主人公です。ただし、指導教員や、その他の人々の意見にも耳を傾ける必要があります。
ところで、研究発表の形として、典型的なのが論文発表です。多くの場合、論文の原稿を出版社に提出すれば、掲載してもらえるという訳ではありません。必ずといっていいほど、原稿の内容について、その研究領域の専門家から批判されます。批判に対して、反論する力が必要です。もちろん、批判が当たっていると思った場合には、研究内容を修正/改善する必要があります。
とくに自然科学系の場合では、多くの場合、論文を英語で執筆します。したがって、英語を読む力、書く力は重要です。さらに、論文という形ではなく、学会で発表することもあります。特に国際学会では、英語で議論する力が重要です。聞く力と話す力が必要です。
ところで、研究力は、いわゆる学術研究や基礎研究だけではなく、広く地域の課題や、日常生活の問題を解決する力を養うことにも役立ちます。まず、問題点をはっきりさせて整理し、対応方針を立てるところから始まります。課題解決にむけて行動し、その行動がどの程度有効だったかどうかを振り返ります。
さて、昨年の入学式では、新入生の皆さんに新聞や本を読むことを勧めました。経済学者のトマ?ピケティーが書いた大変厚い本「資本とイデオロギー」を推薦しました。この本では、統計の取り方によって、重要なことが浮き彫りになることを鮮やかに示しています。例えば、国民所得の平均値では分かりませんが、所得の分布を示すことで、「所得格差」の拡大を見える化できます。つまり、「人々を所得の高い順にならべてみた場合,そのトップ10%に入る人々に、国民所得のどのくらいの割合が集中しているのか」を示した数値がその一例です。
著者の結論は、「経済学が独り歩きしすぎた結果、歴史学者、社会学者、政治学者、哲学者は経済問題の研究を、経済学者に丸投げしてしまうことがあまりにも増えた。市民が経済と歴史の知識を再び我が物にできるようにすることが大切だ」ということです。
今年度は、昨年ノーベル経済学賞を受賞した、ダロン?アセモグルの本をあげたいと思います。「技術革新と不平等の1000年史」という本です。原題は、「Power and Progress」です。
これは、人工知能をはじめとして、デジタル技術の進歩が、自動的に社会を良くするとは限らないと、警鐘を鳴らしている本です。2023年の12月に日本語訳が出ています。英文の原著も2023年の出版で、比較的新しい本です。過去の技術革新の歴史をみても、技術革新を主導して支配した人がもうかり、一般人は貧しいままであるという、歴史経済学からの教訓を述べています。
テクノロジーの進路を専門家に任せ、それ以外の人々に対してはテクノロジーを使えるように教育すればよいという立場には、明確に反対しています。デジタル?ツールについても、賢い人が設計し、そうでない人はツールを使えれば良いという考え方では、財産の集中をまねき、社会格差の固定につながるという展望です。この流れに対抗するには、ツールの利用者は、ツールの働き方について学び、ある程度ツールを支配できるようになることが有効だと述べています。
アセモグルの書いたもので、もう一つ推薦したい本に、「自由の命運」という本があります。副題として、「国家、社会そして狭い回廊」が付いています。原題は、「The narrow corridor」です。「狭い廊下」という意味です。これは、2020年に日本語訳が出版されています。現在、世界の政治状況が流動化し、紛争が多発している状況を踏まえて、読む価値のある本です。世界の政治体制と社会との関係について、古代から現代まで、様々な地域を網羅する形で書かれています。とくに、そこに生きる普通の人々の「命運」に焦点をあてて解説した本は、他にあまりないと思います。先ほど紹介した「技術革新と不平等の1000年史」とは、また違った印象があるでしょう。
さて、静岡県は温暖な気候、富士山や駿河湾など豊かな自然に恵まれ、多様な食文化もあります。本学の草薙キャンパスは、緑豊かな日本平の斜面の裾野に位置しており、隣には県立美術館があります。本学の学生には、無料で観覧できる常設展や、特別展の割引もあります。小鹿キャンパスは、ここグランシップからも近く、日本平の麓にあって、小鹿商店街にも近く、地域住民の方々がご家族連れで気楽に立ち寄れる場所です。
本学は、5つの学部と大学院、短期大学部を擁する総合大学で、外国人留学生も多数在籍しています。4つの学部が草薙キャンパスを、看護学部と短期大学部が小鹿キャンパスを本拠地としています。自分の専門の学習はもとより、他の専門を学んでいる学生、外国人留学生や地域の方々、教職員とも交流して、自ら様々な視点を獲得すること、地域課題の解決にも関心を持っていただけることを期待しています。
大学に入ると、やるべきことや、やりたいことがいっぱい出てくると思います。これから入学式の第2部として、クラブ?サークルの紹介もあります。新入生の皆さんが、こころと身体の健康に気を配りつつ、有意義な学生生活を送ることを期待して、私のお祝いの言葉とします。
本日は まことに入学おめでとうございます。
誓いのことば
新入生代表 薬学部 新谷柊斗さん
暖かな春の日差しが降り注ぐ今日をもって、この静岡県立大学に入学できることを心より嬉しく思います。本日は私たち新入生のために素晴らしい式を執り行っていただき誠にありがとうございます。
また、ただいま今井康之富易堂rich88手机版、静岡県知事 鈴木康友様、静岡県議会議長 落合愼悟様から温かいお言葉をいただき、新入生一同嬉しく思っております。静岡県立大学生としての自覚と高い志を持ち、日々の勉学に励みたいと思います。
現在グローバルな規模での競争社会が形成されています。これに加え、日本では人口減少や少子高齢化が進んでいます。こうした現状をとらえ、私たちは個人が社会人として競争に打ち勝つ力を身につけることが必要だと考えます。また、富易堂rich88手机版のような対峙したことのない課題に直面しても、研究者や情報発信者として力を発揮し、解決していかなくてはなりません。
私が本学を志望し、入学したのは、医療に興味関心があり、また生まれ育ったこの静岡に貢献したいという思いがあるからです。ここにいる新入生もそれぞれの思いや夢を持っていることでしょう。
私たちは今日から静岡県立大学生としての第一歩を踏み出します。新しい生活において不安もありますが、それ以上の期待を胸に大学生活を実りあるものとします。
そして様々なことに挑戦し視野を広げることで社会に貢献できるよう努めます。
そのためにも先生方には厳しいご指導を、先輩方には温かいアドバイスをいただきたいです。
本日入学を許可された私たち898名は志す分野はそれぞれちがいますが、これからの社会の担い手となるため、今日の決意を忘れずに、日々精進して参りますことをここに誓います。
また、ただいま今井康之富易堂rich88手机版、静岡県知事 鈴木康友様、静岡県議会議長 落合愼悟様から温かいお言葉をいただき、新入生一同嬉しく思っております。静岡県立大学生としての自覚と高い志を持ち、日々の勉学に励みたいと思います。
現在グローバルな規模での競争社会が形成されています。これに加え、日本では人口減少や少子高齢化が進んでいます。こうした現状をとらえ、私たちは個人が社会人として競争に打ち勝つ力を身につけることが必要だと考えます。また、富易堂rich88手机版のような対峙したことのない課題に直面しても、研究者や情報発信者として力を発揮し、解決していかなくてはなりません。
私が本学を志望し、入学したのは、医療に興味関心があり、また生まれ育ったこの静岡に貢献したいという思いがあるからです。ここにいる新入生もそれぞれの思いや夢を持っていることでしょう。
私たちは今日から静岡県立大学生としての第一歩を踏み出します。新しい生活において不安もありますが、それ以上の期待を胸に大学生活を実りあるものとします。
そして様々なことに挑戦し視野を広げることで社会に貢献できるよう努めます。
そのためにも先生方には厳しいご指導を、先輩方には温かいアドバイスをいただきたいです。
本日入学を許可された私たち898名は志す分野はそれぞれちがいますが、これからの社会の担い手となるため、今日の決意を忘れずに、日々精進して参りますことをここに誓います。
(2025年4月9日)