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薬草園歳時記(29)駿河天南星とその仲間 2023年8月


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 テンナンショウ属(Arisaema)はサトイモ科で地下に塊茎(球茎)をもつ多年草で、熱帯のサトイモ科の中で、分布域が広く、特に東アジアに多い。テンナンショウ属はサトイモ科の中でも特異な性質を持ち、性の転換をする。一部の種類では、小形の時期は雄花しか付けず、大きく成長すると、両性花を付ける種類がある。また、成長につれて、雄性→両性→雌性に転換をする種類もある。種類が多く、系統的な関係まで解明されていないため、大きな群として扱われている。

 天南星の仲間は、開花期の仏炎苞や付属体の独特な姿に魅力を感じる人が多く、山野草として今も人気が高い。葉身が三枚から多数のものまで、鳥足状や掌状、車輪状などになる種類まであり、葉にも観賞価値があるとされる。

 園芸店では春になると、ユキモチソウ(雪餅草、学名:Arisaema sikokianum)が売られていることがある。テンナンショウ属で、花の外側の仏炎苞の中に先端が丸く膨らんだ、こん棒状の付属体があり、それを白い餅に見立てたのが名前の由来である。玉蜀黍(トウモロコシ)のような薄緑の果実ができる。開花期には蠅などの小昆虫に魅力的な香りを出し、おびき寄せて花粉を運んで貰う。雄株の筒の中で花粉まみれになり、すき間から脱出し、雌株に向かい受粉を手伝う。雌株には蠅の脱出できるすき間がないので、食虫植物ではないが、蠅は命を落とすことになる。つまり、恩を仇で返す仕組みになっている。

 テンナンショウ属は地方に固有種が多くあり、絶滅の恐れがある種類がある。むやみに山取りしてユキモチソウなど自然集団が大きな打撃を受けた場合もある。生育には種子から成体に育つまでに年月を要する。熱帯種を除くほとんどが、一年に一度しか葉を展開しないため、葉に障害が起きると、著しく生育に影響を受ける。雄?雌がそろわないと種子ができないのもあるが、栽培を含め、生育増殖は難しい種類がほとんどで、夏の高温やダニ類などにも注意する必要がある。

スルガテンナンショウ

 スルガテンナンショウ(駿河天南星、学名:Arisaema sugimotoi Nakai)は、サトイモ科テンナンショウ属の多年草である。別名は、エンシュウテンナンショウである。近縁種に、ムロウテンナンショウ(室生天南星、学名:Arisaema yamatense (Nakai) Nakai) (1929)があり、その分布は、愛知県、岐阜県、近畿地方、福井県、中国地方南部である。仏炎苞舷部の内面に微細な乳頭状突起を密生させることは共通であるが、仏炎苞の舷部は筒部より短く、先は急鋭突頭となる。

 スルガテンナンショウは従来、ムロウテンナンショウの亜種とされてきたが、核DNA ITC領域の系統解析の結果、明らかに区別できる別種であることが分かった。スルガテンナンショウは 静岡県や愛知県、山梨県、長野県、岐阜県の太平洋側の山地に分布している。特徴は開花期の肉穂花序の付属体の先が少し曲がり、急に膨れて円形になっている。(ムロウテンナンショウの付属体と比較すると、顕著に曲がり、先端部はより膨れて円形となる。)
 植物体の高さは70cmになり、鞘状葉や偽茎部の斑は暗紫色でやや赤味が強い。葉はふつう2個で、葉柄は偽茎部より明らかに短く、小葉間の葉軸が発達する。上位につく葉は下位の葉に比べて明らかに小さい。小葉は9-15個が鳥足状につき、狭楕円形で、縁はしばしば細鋸歯があり、中脈に沿って白斑が生じることがある。4月頃に葉と花序が伸びて咲き始める。仏炎苞があり、明るい緑色である。葉と同時に展開し始める。狭卵形から卵形になって次第に先が細まって鋭突頭となる。

 タイプ標本の採集地は、静岡県志太郡瀬戸谷村(現藤枝市)であり、中井猛之進 (1935) によって命名された。種小名(種形容語)「sugimotoi」というのは、静岡県の植物研究家である杉本順一(1901~1988)への献名であるという。杉本順一が集めた標本の多くは、ふじのくに地球環境史ミュージアム(静岡市駿河区)で現在は保存されている。戦前に静岡市の自宅に保存していた標本は静岡大空襲(1945)で失ってしまったが、戦後に集めた標本は保存状態が良く、高く評価されている。

<以上、Wikipediaから一部(写真を含む)を抜粋>

4月頃のウラシマソウ(左)とウラシマソウの名札(右)薬草園提供

 薬草園ではウラシマソウ(学名:Arisaema Urashima Hara)、ムサシアブミ(学名:Arisaema ringens (Thunb.) Schott)、ミツバテンナンショウ(学名:Arisaema ternatipartitum Makino)の三種類を維持管理している。これらは、どれも丈夫でよく増殖する。薬用には、主に塊茎を使うが、薬効が強いため注意が必要である。神経痛、腰痛、肩こりに良いとされるが、成分の詳細が分かっていない。

4月頃のムサシアブミ(左)と7月頃のムサシアブミ(右)薬草園提供

 北海道に行くと、コウライテンナンショウ(学名:Arisaema japonicum var.)がある。高麗天南星と書く。「高麗」は昔の朝鮮半島の国名、「天南星」は漢名に由来する。仲間を総称して、花の形が舌を出した蝮の姿に似ていることから、これを「マムシグサ」とも呼ぶことがある。学術的にはマムシグサの変種となっているが、中間型もあり、変異が多くあるため区別が難しい。

 北海道の十勝に広く生育し、市街地の緑地でもよく見かける。サトイモ科の多年草で、古い文献では「エゾテンナンショウ」と記されている。半透明の縦縞がある緑色の仏炎苞の中に、たくさん小さな花があり、赤い果実がかたまって実る。「ヘビノタイマツ」の別名もある。

 コウライテンナンショウはアイヌ語では「ラウラウ/rawraw」という。アイヌ文化の中にあり、もともと有毒な植物であるが、塊茎は時期が来ると食べられるようになる。有毒部分が成熟すのを待たずに食べると口がしびれて大変な思いをする。晩秋に球根を掘りとり、塊茎上部の黄色の部分をくり抜き、根の真ん中にある有毒部分を取り除いて炉の灰の中で焼いて加熱調理して食べると、とても美味しいという。

 テンナンショウ属の植物の塊茎はデンプンを貯蔵しているが、毒抜きして、えぐみを取り除かなければ食用にならないものがほとんどである。テンナンショウ属の中でも例外的な種類がある。伊豆七島の固有種、シマテンナンショウ(別名:ヘンゴダマ)(学名:A. negishii Makino)は塊茎がゆがんだイモ状で、毒抜きしなくても茹でて食べることができる。

 アイヌ文化では、薬にする場合は、根をすりおろして痛む部分に湿布をしたり、種子を腰痛などの薬として飲む。長野県の地方でもマムシグサ(学名:Arisaema japonicum Blume)を腰痛の妙薬としてアイヌ文化と同様に薬として用いられることがあった。また、歯が痛い時に、塊茎を切って痛むところの頬に当てると痛みが治まると言われているが、全草にシュウ酸などの有毒成分が含まれているので、あまり触らない方がよいだろう。

 牧野富太郎生誕150年記念共同事業として牧野日本植物図鑑(初版?増補版)インターネット版が公開されている。このデジタルコンテンツは公益財団法人高知県牧野記念財団と株式会社北隆館が作成したもので、牧野日本植物図鑑(1940)と同増補版(訂正版)(1956)の全頁が掲載されている。

 この中での例を示すと「てんなんしやう」などが次のように掲載されている。

インターネット版 牧野日本植物図鑑(北隆館)より *写真の二次使用は禁じられています

 アオテンナンショウ(青天南星、学名:Arisaema tosaense)は牧野富太郎が名付けた。
 アオテンナンショウは、サトイモ科テンナンショウ属の多年草である。和名のとおり植物体全体が緑色であり、仏炎苞舷部が半透明で先端が細長く糸状に伸びる。小型の株は雄花序をつけ、同一のものが大型になると雌花序または両性花序をつける雌雄偽異株で、雄株から雌株に完全に性転換する。種小名(種形容語)tosaense は、「土佐の」の意味で、高知県の横倉山および鳥形山で採集された標本によって、牧野富太郎 (1901) によって新種記載された。


天南星枯る道造のパステル画    宮坂静生
蝮草一本二本ならずあり      右城暮石
さらに奥へ道の通じて蝮草    正木ゆう子
西部林道脇に群れたる蝮草     尾池和夫

尾池和夫?山本羊一

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